デザインとアートのこと

食べ物なのにデザインとアートというテーマと思った方もいると思います。

 

デザインという言葉は広告やファッションなど見栄えを整えるために使われている言葉かと思います。

アートという言葉は画家やイラストレーターが描いた絵やプロダクトなど、芸術作品のことを語る上で使われている言葉だと思います。

どちらも似たようなイメージで使われることもありますが、

僕は音楽で表現をしたり、デザイナーとして仕事をしてきて、経験してきて思っていることは

 

デザインは「伝える手段・手法」

アートは「思想」

 

が僕なりの答えです。

 

「デザイン」という言葉はアートと近い感覚で使われることも多く、実際は形を作り見栄えを良くすることに使われることが多いですが、その本質は伝えたい物事があるときに、何かの形にしたり、言葉や絵として表現したり、体験してもらうなど、どのようなかたちや手法が最適なのか、自分なりの最適解を出し、正しく外に伝えることがデザインと考えています。

良いデザインとは、伝えたい相手に自分が思った通りに正しく伝える事ができるものが良いデザインだと思っています。

 

「アート」とはその人の中にある残していきたいと思う考えや問いかけ訴え、提案したい物事の考えの思想の部分をアートと考えています。

絵画や音楽、写真、書、プロダクト、ファッションなどは表現する手法(それがデザインをするということ)で、その手前の何を訴えたいのかの本質の思想の部分を「アート」と捉えています。

アート自体には形はなくて、自分の訴えたいこと、表現したいと自分の中から出てきた思いがアートなんです。

 

 

どんな人でもアートという思想を持ち、デザインするという作業はやっているんですよね。

毎日の服やアクセサリーを選んで好きなものを身につけるということも「自分はこういう人になりたい」「こういう人だ」「こう思ってほしい」という思い(アート)を外に出すデザインなんです。

自分の部屋を好きなようにレイアウトすること、SNSなどで自分の好きな写真を発信することも全部自分を表現するデザインなんです。

プロのデザイナーと違うところは対価を発生させ責任をもつということもありますが、個人では知識の部分で表現方法の幅が少なかったり知らなかったり、作り込み方が足らなかったりするだけで、仕事では個人でやることの延長線上で知識をつけ、さらに細分化して分析し、多くの人に最適な方法で伝える手段を身につけるということだと思っています。

 

 

料理もそんなアート(思想)から作り出すデザイン(伝える作業)だと思っています。

僕の中では料理もアートやデザインの一つの表現の仕方の一つで今までやってきたことと変わらないんです。

自分が伝えたい味をどうしたら人に伝えられるか、どんな料理にしたら自分の思いが伝わるのか。

例えば「このりんごの美味しさを表現したい!」という思想(アート)があったときにどう伝えるのがたくさんの人に伝わるのか形にする(デザイン)のか。

料理人であればりんごをどんなふうに料理すれば美味しいと思ってもらえるのかを考えて、

「アップルパイやそのままだと世に馴染みすぎているので目に入らないかもしれない。そしたら一般の人が食べ馴染みのあるハンバーガーに使うことで見た目も新しく、新たな調理方法や食べ方を提案をすることも伝わりやすくなるんじゃないか。」

とか考えてみたり。

でもそれは料理人は料理で表現しているだけで、それ以外の人は絵が得意であれば食べたくなるようなシズル感のある絵を描くかもしれないし、音楽家ならりんごの魅力を表現した歌にするかもしれない、言葉を作り出すのが得意であれば食べてみたくなる引きのあるキャッチコピーを考えるかもしれない、映像として作品を作る方法もあるかもしれない。

そんな感じで表現方法が違うやり方でもいろんな角度から伝えることはできます。

メニューを考えるときの細かい考え方はまた違う機会に書こうと思っていますがこれがデザインをするという作業の一つです。

 

 

 

とはいえ、正しい回答も正解もないのがアートやデザインの世界です。

多くの人から支持されることを目標にするのが正しい答えかもしれません。

時代や流行り、文化によっても答えは変わっていくと思います。

でも、自分を信じて出したものが自分にとっての正しいアートやデザインであり、自分にとって正しいものだと僕は信じています。

 

自分から考え出た思想はその人の思想を形にしたもので世界にたった一つのオリジナルのものです。

そこには誰にも同じものを作れない価値があります。

その価値に共感してもらえることが結果として対価になっていく。

綺麗事だけではできないこともありますが、僕の考えの根っこはここにあります。

 

ここに文章として書き出すことが最適解と判断して書いていることも「言葉で伝える」ことを選んだ僕のデザインです。